昭和30(1955)年、仙台市松島町で行われた植樹祭を訪れた昭和天皇に、有香が進講したことが機縁となって、翌年から毎年の夏、那須や下田、皇居で天皇の植物研究の相手をつとめることになりました。昭和38(1963)年5月、天皇・皇后が再び仙台を訪問した時、有香はすでに定年退職後でしたが、名誉教授として後継の園長らと共に植物園内を詳しく案内しています。昭和天皇は、この時の印象を、翌年の新春歌会始で次のように詠んでいます。
城あとの 森のこかげにひめしゃがは うす紫に 今咲きさかる
ヒメシャガはうっかりすると踏みつけそうになるほど小柄ですが、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブにない優しさがあるようです。